FP兼社労士が、老齢年金の繰上げ・繰下げ受給とNISA運用を組み合わせて考察

※本記事は筆者のnote記事と同一内容です。

老齢年金の繰上げ、繰下げとNISA運用を組み合わせ資産

老齢年金の繰上げ、繰下げはそのままの金額で損益分岐点を計算して紹介されることが多いです。
しかし昨年より新NISAが始まり、枠が最大まで空いている状況ですので、仮に老齢基礎年金を全額運用した場合にどうなるかをシミュレートしてみました。インデックス投資ですと運用利回りが想定できますので計算しやすいです。

以下、新NISAでの運用(安定/ベース/楽観)で比較し、グラフ化しました。
(下図:各シナリオでの年齢別ポートフォリオ評価額)

【グラフ:安定(2%)・ベース(4%)・楽観(6%) の3枚。各枚で「60歳繰上げ/65歳受給/70歳繰下げ」を比較】


試算の前提

  • 対象:老齢基礎年金のみを比較のベースにしました(厚生年金や加給等は未計上)。

  • 年金額(モデル):65歳満額 80万円/年
    繰上げ:60歳開始(▲0.4%/月×60=▲24%60.8万円/年)。
    繰下げ:70歳開始(+0.7%/月×60=+42%113.6万円/年)。

  • 年金で受け取った金額をその年の新NISA枠で全額投資(枠に収まる範囲)。
    年間上限 360万円・生涯拠出上限 1,800万円を想定(拠出のみをカウント、運用益は非課税で上限に含めない)。
    他の入出金・生活費や税・物価スライドは考慮せず、純粋に「投資に回した年金の資産価値」で比較。

  • 運用利回り(年率・複利):安定2%/ベース4%/楽観6%

  • 期間:60~95歳


結果サマリー(95歳時点の評価額・概算)

  • 安定(2%)

    • 60歳繰上げ:約2,751万円

    • 65歳受給 :約2,657万円

    • 70歳繰下げ:約2,560万円

  • ベース(4%)

    • 60歳繰上げ:約4,284万円

    • 65歳受給 :約3,954万円

    • 70歳繰下げ:約3,644万円

  • 楽観(6%)

    • 60歳繰上げ:約6,784万円

    • 65歳受給 :約5,929万円

    • 70歳繰下げ:約5,191万円

この前提では、どの運用シナリオでも「60歳繰上げ+新NISA運用」が最も高い最終評価額になりました。
早期から投資に回せる期間が長く、複利の効果が大きいためです。繰下げ(70)は年金の年間額は大きいものの、投資開始が遅い分、資産額で逆転しにくい結果です。


参考メモ

  • NISAの生涯拠出上限到達年齢(ベース前提)

    • 70歳繰下げ:86歳/65歳受給:88歳/60歳繰上げ:90歳
      (繰下げは1回あたりの拠出が大きいため早く上限到達。ただし開始が遅いのでトータル資産は伸びにくい)

  • 本結果は投資リターンが常に正という前提の「資産額比較」です。
    実際の受給設計では長生きリスク(長寿化)・インフレ・課税・医療費ピーク等も重要です。
    例えば「確実な生涯受取年額を増やす」観点では繰下げが有利になり得ます。

結論
老齢年金の繰上げ受給は、65歳みなしというルールがあるために例えば障害年金が発生しなくなる等のリスクはあります。
しかしながら繰上げの割引率が5%から4%に下がったことで、最大5年早く受け取れる繰上げのメリットが非常に大きくなりました。
しかも、NISAで運用した場合、上記の通り95歳までにも差が広がる一方となります。

しかもまだ、繰上げ受給はデメリットがありますが、繰下げ受給と65歳の通常受給とでは、運用を前提とする場合繰下げるメリットが、大きな運用損が連続する場合以外は皆無になります。
もちろん投資は絶対にプラスになるわけではありませんが、安全性の高い2%や4%運用想定でも95歳時点で繰下げない方がプラスになります。

繰下げ受給は、受給開始まで元本を一切受け取らないという余裕が必要になります。
そうするくらいならば新NISAで安全性の高い運用をするべきではないか、これが社会保険労務士兼ファイナンシャルプランナーとしての筆者の結論です。

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