【被扶養者】社会保険審査官に対する不服申立て【令和4年最高裁判決について】

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社労士にも知られていない?令和4年の被扶養者の判決について

被扶養者の処分の不服についての令和4年最高裁判所の判決が、社労士の勉強会でも知られていなかったために記載致します。

ベテランの社労士の先生も多く勉強熱心な先生方たちでも、

調査した私以外は誰もご存じなかったため、実務家の方にも広めるきっかけになればと思い記載致します。

 

法科大学院で行政事件訴訟法を含め行政法その他六法を広く学んできた社労士の執筆ですが、

 

社労士分野以外で法改正に対応できていないことなどがございましたら何卒ご容赦ください。

 

また社労士試験の健康保険法で、万が一この判例が出た場合には超難問になると思われるので、

受験生にも知って頂けたらと思います。

2024年9月追記)2024年度社労士試験受験した方、どうもお疲れさまでした。

本判決は出ませんでしたが健康保険法択一式の今年の難易度は非常に高いですね。

 

全国社労士会連合会編著の書籍の記載はこれまでの扱いのまま

引用:全国社会保険労務士会連合会編著『社会保険の実務相談』令和5年度版(中央経済社)

Q110(p111)、審査請求できる事項の事例につきまして、社会保険審査官に「審査請求できる事項として、

  • 被保険者の資格
  • 標準報酬または保険給付に関する処分

のみで、被扶養者に関しては対象外なので審査請求しても却下される」という記載があります。

確かにこれまでの扱いはこの通りであり、その却下処分に対して行政事件訴訟法に基づく行政訴訟(本件処分取消等訴訟)が提起されていました。

そもそも社会保険審査官とは何か

社会保険関係の不服申立ての審査を扱わせる機関として、「社会保険審査官及び社会保険審査会法」に基づき、地方厚生局に所属し健康保険法などの審査請求専門の官職を社会保険審査官といいます。

詳しくは、近畿厚生局の公式ページをご覧ください

判決で扱いが正反対になる

その結果、令和4年の最高裁判決(処分取消等請求事件、令和4年12月13日判決/最高裁判所第三小法廷)にて、その見解が見直されています。

この判決の結果、社会保険審査官の審査請求の内容に「被扶養者に関する処分」が入るようになるという、これまでの扱いと真逆になるという極めて大きな影響があるはずですが大きく扱われた記憶がありません。

また、この被扶養者の判例については知っている社労士が極めて少ないようで行政法の新判決の一つにすぎない知名度であり、

弁護士の先生方も健康保険法の運用には関与する機会が少ないことから、

実務上はっきりした運用の指針が示されていない現状です。

現在は被扶養者も審査対象になっているはずだが周知されていない

今後、被扶養者に該当しない旨の通知に不服がある場合、法定期間内に速やかに審査請求を行う必要がありますが、
現時点ではまだ、審査請求対象外の表示が残ったままのホームページもあるような状況であり、周知が図られているとは到底言えません。

そうなると、以下の重大な問題点が考えられます。

行政事件訴訟法により不服申立てを速やかにする必要がある

本判決の内容が多くの社労士にも知られていないということは、
審査請求期間内(不認定の決定があったことを知った日から3か月以内)に何もアクションを起こせない場合、結局不服申立ての道が閉ざされてしまいます。

なぜなら審査請求が可能だと判断された結果、行政事件訴訟法192条により

審査請求をしていない場合取消訴訟を提起したとしても却下されてしまうからです(不服申立て前置主義といいます)。

 

健康保険法はプロでも基本的に社労士は行政事件訴訟法の知識がない

しかしながら行政事件訴訟法について知識のある社労士はかなり少ないと考えられ、
そんな中で「被扶養者の処分について審査請求が出来る」ことが認知されていない現状では、
被扶養者不認定について速やかに審査請求を行うという手段が取れない方が多くおられると考えます。
なお、相当数おられる行政書士兼社労士の先生なら知っているかについてですが、
私は取得したのが大昔のために現在の行政書士試験については全く詳しくないですが、
行政書士は訴訟には関与できないので行政事件訴訟法については詳しい方は少ないと考えられます。
弁護士の先生方は労働法については司法試験選択科目であり、専門分野とされておられる方も多くいらっしゃいます。しかし労働法に社会保険各法は含まれないため、健康保険法を含む社会保険制度に詳しい弁護士は非常に少ないようです。

審査請求前置主義・周知の必要性

また、もし「審査請求を経ていない場合は裁判所に訴えることができない」ことを相談を受けた社労士などが知っていたとしても、

「保険者による被扶養者に関する処分」について審査請求が出来ることを知っていなければ、審査請求をせずに直接取消訴訟を提起できないために救済方法が取れないのです。

だからこそ本件の周知を図る必要性が強いと感じ、今回取り上げた次第です。厚生労働省など行政も、協会けんぽや健保組合など保険者からも、もっと広報していただきたいと思います。

本判決は結局どうなったか

なお本判決は、「被扶養者の認定について審査請求の対象になる」と判断した一方で、
上記行政事件訴訟法192条により審査請求をしていなかったという理由で、
被扶養者不該当処分について、取消訴訟の原々審原告の請求は結局は「却下」という判決で終了しています。
すなわち、今後上記書籍などの「被扶養者についての決定については社会保険審査官に審査請求が出来ない」という誤った表記を信じて、
もし審査請求を経ずに取消訴訟を提起したとしても、行政事件訴訟法192条により不適法却下の判決が必ず出てしまうことになります。

新日本法規の弁護士の先生の解説

本判決については重要な最高裁判決であるにも関わらず、
参照ブログで後述する全国社会保険労務士会連合会会長が代表をされておられる社労士法人のブログの他には、新日本法規社の弁護士の先生の判例解説しか見当たりません。
ある程度判例集を読む訓練をされている方は是非ご覧ください。

審査請求はどこでおこなうか、社会保険審査官と社会保険審査会

不服申し立てはまず、地方厚生局の社会保険審査官に対し審査請求を行います。

その上でさらに不服があれば、社会保険審査会(厚生労働省内)に再審査請求をするか、または本件のように取消訴訟を提起することが出来ます。

これは健康保険法の規定が不服申し立て前置主義をとっているために、いきなり行政事件訴訟法による取消訴訟を提起しても本件最高裁判決のように却下されるからです。

なお、厚生労働省が出している図はこちらです。

社会保険審査官への不服申し立ては地方厚生局に、電話番号や所在地など

地方厚生局は以下の通り、基本的に全国の地方ごとに一か所あります。近畿だと大阪ですね。

地方厚生(支)局所在地一覧 (mhlw.go.jp)

ちなみに社会保険審査会は厚生労働省内にありますが、第2審でありいきなりこちらに審査請求は出来ません。特別な知財事件などの例外を除き、高等裁判所にいきなり提訴できないのと同じです。

社会保険審査会|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

審査請求はどうやって行うか。電話で出来るか?

「審査請求は文書または口頭で行う事ができる」(社会保険審査官及び社会保険審査会法5条)とされています。

このような定めは刑事訴訟法の警察や検察への刑事告訴や告発、民事訴訟法の簡易裁判所への提訴でもありますし口頭での場合はその機関に赴いて聞き取り調書が作成されます。

事件を扱うという点は同じですから、電話で事情を説明は可能であっても審査請求自体を電話では不可能でしょう。地方厚生局まで赴けば口頭でも聞き取り受理はしてもらえると思いますが、問い合わせた上で行ってください。

今回の判決の結果はどうなったか?

本件の場合、これまで被扶養者の不該当認定については審査請求が出来ないとされており、広く周知されていました。この判決のケースにおいては審査請求が出来ないと説明されたから提訴したはずであり、最後の却下判決は遡って審査請求が不可能なため、無理を強いるものであって疑問が残ります。

今後は判決を知らなかったは通用しませんが、本判決の結果は「社会保険審査官への審査請求の対象に被扶養者に関する決定が含まれる」という判旨が大事です。ただし個別の事案としては救われていません。

結論・まとめ

ネット上で「被扶養者、不服申し立て」などで検索しても上記2つの記事くらいしか結果に表示されない現状でありますが、これまでと扱いが正反対になるという大きな影響が出るはずの判決です。

大多数の社労士は行政事件訴訟法は専門外であり、弁護士は健康保険法の扱いが業務内容になることがほぼないと考えられることから、双方からの周知が図られていない現状です。

健康保険法189条1項による社会保険審査官を行わなければ、行政事件訴訟法192条により被扶養者の決定に対しての救済手段が閉ざされるという重大な結果になります。

本判決やその後の扱いにつき、早急な周知や発信が望まれます。

参照ブログはこちら

全国社会保険労務士会連合会・大野会長の事務所ホームページに、今年になってからのこの判決についてのコラムが書かれていますのでご参照ください。

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