「退職給付金」という制度は存在しません――社労士が警告するネット広告の罠


社労士警告
「退職給付金」という名称の公的制度は、日本に存在しません
SNSやウェブ広告で目にする「退職するだけで〇〇万円もらえる」「給付金を最大化できる」といった宣伝文句は、誤解を招く表現や悪質なビジネスの可能性があります。

📋 この記事のポイント

  1. 「退職給付金」という公的制度は存在しない
  2. 実在する制度(雇用保険の基本手当など)の正しい知識
  3. 国民生活センターも注意喚起:申請サポート業者のトラブルが急増
  4. 不正受給を誘導される危険性がある
  5. もし困ったら、正規の相談窓口へ

「退職給付金」という制度は存在しない

社会保険労務士として、日々多くのご相談を受ける中で、最近とくに気になるのが「退職給付金」という言葉を使ったネット広告やSNS投稿です。

結論から申し上げます。「退職給付金」という名称の公的給付制度は、日本に存在しません。

厚生労働省・ハローワーク・日本年金機構・各都道府県の労働局、いずれの公式サイトを確認いただいても、「退職給付金」という制度は出てきません。これは作られた言葉です。

退職後に受けられる「実在する制度」とは

退職した際に活用できる公的な給付制度は存在します。ただし、それらには正式な名称と条件があります。

① 雇用保険の基本手当(いわゆる「失業給付」「失業保険」)

雇用保険に加入しており、離職前2年間に被保険者期間が通算12か月以上ある場合に受給できます(特定受給資格者・特定理由離職者は離職前1年間に6か月以上)。給付日数は離職理由・年齢・被保険者期間によって異なります。ハローワークへの求職申し込みと、定期的な求職活動が受給条件です。

② 傷病手当金(健康保険)

在職中に病気やケガで働けなくなった場合に支給されます。退職後も一定の条件を満たせば継続受給できますが、あくまで在職中から継続している傷病が対象です。

③ 就業促進手当・再就職手当など

基本手当の受給中に早期再就職した場合に支給される手当があります。これも自動的にもらえるものではなく、ハローワークへの申請が必要です。

💡 共通点:これらはいずれも「退職給付金」とは呼びません。また、特定の民間業者を経由しなければ受け取れない制度は一つもありません。手続きはすべてご自身で、または社会保険労務士・ハローワークに相談して行えます。
【ハローワーク那覇】公式サイトでも明記

雇用保険制度に基づく失業等給付(一般に「失業保険」「失業手当」などと呼ばれます)は、仕事を失った方が生活を維持しながら再就職を目指すための公的制度です。ハローワークで申請を行い、一定の条件を満たせば受給できます。給付額や期間は、退職理由や勤務年数などにより異なります。
出典:厚生労働省 沖縄労働局 ハローワーク那覇(2026年3月)
「退職給付金がありますとうたう失業保険申請サポートサイトにご注意ください※退職給付金という名称の制度はありません」
ページを見る(厚生労働省サイト)

国民生活センターも警告:「申請サポート」業者のトラブルが急増

「退職したら給付金を最大化できる」「受け取れるお金を増やす申請をサポートする」と称する業者とのトラブルが、全国で急増しています。

国民生活センターは2025年12月、以下の注意喚起を発表しました。

「失業保険の給付額等を増やすことができるとうたう申請サポートに注意!」
国民生活センターに寄せられた相談件数は、2021年度42件・2022年度54件・2023年度113件・2024年度217件と急増。2025年度も10月末時点ですでに216件に上っている。
出典:独立行政法人 国民生活センター(2025年12月3日発表)
https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20251203_1.html

寄せられたトラブル事例

⚠️ 実際に報告されているトラブル

  • 申請サポートを依頼したが、期待したほど受給額が増えなかった。にもかかわらず、高額な報酬を請求された。
  • 途中解約を希望したが、業者が認めなかったり、高額な違約金を請求されたりした。
  • 精神的な不調がないにもかかわらず、指定クリニックで受診するよう指示されるなど、不正受給を促すかのような誘導をされた。

とくに3つ目のトラブルは深刻です。虚偽の診断書を取得して給付金を不正受給した場合、返還命令・追徴金・刑事罰の対象となります。「業者に言われたから」は免責事由になりません。

なぜ「退職給付金」という言葉が使われるのか

「失業給付」や「雇用保険の基本手当」という正式名称より、「退職給付金」という言葉の方が、漠然とした期待感を抱かせやすい。それだけの理由です。

広告では「国からもらえる」「申請するだけ」「最大〇〇万円」といった表現が使われます。これらは虚偽とは言い切れない部分も含みながら、重要な条件や制約を意図的に小さく・わかりにくく表示する手法です。

❌ こんな広告・勧誘には要注意

✗ 「退職給付金」「特別給付金」など、公式制度にない名称を使っている

✗ 「申請するだけで○○万円」と具体的な金額を保証するように見せている

✗ 「うちを使えば給付額を増やせる」と特別なサービスのように宣伝している

✗ 「まずは無料LINE登録」「無料相談」を入り口に、後から高額費用を請求する

✗ 指定のクリニックや医師の受診を勧めてくる

社労士からのアドバイス:正しい相談窓口へ

退職後の給付や手続きについて不安な方は、以下の公的窓口に相談してください。費用は一切かかりません。

🏢 ハローワーク(公共職業安定所)
失業給付の手続き、求職活動のサポート。全国の窓口一覧は厚生労働省サイトから。

📞 消費者ホットライン:188(いやや!)
業者とのトラブル・契約に不安を感じたらすぐに。最寄りの消費生活センターにつながります。

⚖️ 社会保険労務士への相談
雇用保険・社会保険の手続き全般について、専門家として無料相談や個別対応が可能です。全国社会保険労務士会連合会から近くの社労士を探せます。

まとめ

改めて強調します。「退職給付金」という公的制度は存在しません。

退職後に受け取れる可能性のある公的給付は実在しますが、それらは「雇用保険の基本手当」など正式な名称を持ち、ハローワークへの申請と求職活動が条件です。特定の民間業者を使わなければ受け取れない制度は一つもありません。

国民生活センターへのトラブル相談は年々急増しており、中には不正受給を促す悪質なケースも報告されています。「なんとなく気になる広告」に個人情報を入力する前に、ぜひこの記事を思い出していただければ幸いです。

ご不明な点があれば、ハローワークか社会保険労務士にご相談ください。正しい情報をもとに、安心して手続きを進めていただけるようお手伝いします。


※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的判断や申請結果を保証するものではありません。

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